銀座エリアを想定した和のロゴ設計について

今回ご紹介するのは、銀座エリアに位置する店舗「やしろ」様のロゴ制作についてです。

本記事では、完成したデザインそのものではなく、設計に至るまでの前提整理と判断プロセスを中心に解説します。

銀座という土地では、ロゴが前に出ることよりも、空間や雰囲気とどう調和するかが評価に直結します。

そのため本件では、「どれだけ目立たせるか」ではなく、「どこまで主張を抑えるか」という視点を起点に設計を進めました。

ご依頼内容と前提条件の整理

今回のロゴ制作では、銀座という立地を踏まえたうえで、過度な主張を避け、和の品格が自然に伝わることが求められました。

事前に共有された要望は、次の点に集約されます。

・説明的になりすぎないこと
・派手さや装飾性を前に出さないこと
・空間の一部として違和感なく存在すること
・和柄を取り入れつつ、品格のある印象にまとめること

これらは単なるデザインの好みではなく、銀座という立地の特性を踏まえた要望だと受け止めています。

そのため、ロゴ単体の完成度よりも、使われたときの佇まいを重視しています。

銀座という場所が設計に与える影響

銀座では、分かりやすさや強い主張が必ずしも価値になるとは限りません。

周囲の空間や店舗との関係性の中で、違和感なく存在できることが重要になります。

この土地性を踏まえ、本件のロゴは「主役になる記号」ではなく、空間を邪魔しない要素のひとつとして設計しました。

あえて語らない、あえて説明しないという判断も、銀座では意味を持つ要素のひとつと捉えています。

モチーフと構造の考え方

ロゴのモチーフについては、クライアントから和柄を取り入れたいという要望がありました。

その中で選んだのが、青波海と牡丹を組み合わせた意匠です。

青波海は、穏やかな広がりや継続性を象徴する和柄であり、流れや安定感といった意味合いを持ちます。

一方、牡丹は古くから格式や品位を表すモチーフとして使われてきました。

いずれも、銀座という土地に求められる落ち着きや品格と相性のよい要素です。

ただし、和柄をそのまま装飾として用いると、印象が強くなりすぎてしまいます。

そこで本件では、青波海と牡丹の形状を説明的にならないよう抽象化し、円形の中に整理することで、空間に馴染む記号として再構成しました。

和柄の意味や由来を前面に押し出すのではなく、あくまで「和の空気感が自然に伝わること」を優先した設計です。

見る人が細部を意識せずとも、全体から静かな品格を感じ取れる状態を目指しました。

ロゴタイプ(文字)の設計意図

文字部分には、和の印象を持つ明朝体をベースに選定しました。

ただし、格式ばかりが前に出ないよう、線の強さや全体のバランスを調整しています。

銀座という場所にふさわしい品格を保ちつつ、過度に構えすぎないこと。

このバランスを取ることで、ロゴ全体に落ち着きと柔らかさが生まれるよう設計しました。

使用シーンを想定した確認

完成したロゴは、看板やWeb、印刷物など、実際に使われる場面を想定したうえで最終的な検証を重ねています。

サイズを縮小した場合や、周囲に他の要素が並んだ場合でも、主張しすぎず、空間に馴染むかどうかを基準に調整しました。

ここでも重視したのは、「目立つか」ではなく「浮かないか」という視点です。

まとめ|空間に馴染むロゴを目指して

今回のロゴ制作で目指したのは、印象を強く残すロゴではなく、空間や時間の流れの中で自然に受け入れられる存在です。

銀座という土地では、語らないことや抑えること自体が価値になる場面もあります。

その前提に立ち、モチーフや形、線の強さを整理することで、空間に寄り添うロゴを設計しました。

土地性や使用環境を丁寧に読み解くことで、ロゴは単なるマークではなく、場の一部として機能する記号になると考えています。