今回ご紹介するのは、町中華を営むクライアント様からご依頼いただいた、看板で使うことを前提に設計した店舗ロゴの制作事例です。
クライアント様の似顔絵をモチーフにしながら、遠くから見たときの視認性や、看板としての再現性にも配慮して設計しました。
この記事では、制作の背景や設計時の判断軸を、実際の事例に沿ってご紹介します。
どのような前提で設計したのか
ロゴ制作というと、デザインそのものに目が向きがちですが、実際には使われる場面によって求められる条件が変わります。
例えば、スマートフォンの画面で見るロゴと、お店の看板として使われるロゴとでは、見え方が異なります。
画面上では成立する細かな表現も、看板になると輪郭が弱くなったり、遠くから見たときに伝わりにくくなったりすることがあります。
そこで今回は、ロゴ単体の見栄えではなく、店舗で使われたときにどう見えるかを起点に設計しました。
特に飲食店のように、通行人や来店客が短い時間で認識する必要がある場面では、装飾性よりも、まず一瞬で伝わることを重視しています。
店の象徴をわかりやすく伝えるために店主の似顔絵を採用
今回のロゴで特徴的なのは、店主の似顔絵をモチーフにしている点です。
ご要望の一つに、店主そのものが店の個性として伝わる形にしたい、という考えがありました。
飲食店では、料理やサービスだけでなく、「誰が営んでいるか」が店の魅力につながることも少なくありません。
そうした場合、店主をロゴのモチーフにすることで、店の象徴が直感的に伝わりやすくなります。
制作にあたっては、あらかじめ用意されていた複数の似顔絵をもとに設計を進めました。
ただし、そのままイラスト化するのではなく、店主の特徴を活かしながら、ロゴとして成立する形へ整理しています。
つまり、似顔絵を描くこと自体が目的ではなく、店主の個性を活かしながら、記号として認識しやすい形に変換することを重視しました。
実際の店舗では、このロゴはのれんとして使用されています。
店主の似顔絵がそのまま店の顔として掲げられることで、通りから見たときにも印象に残りやすく、店の雰囲気が自然に伝わる形になっています。
この「店主から似顔絵へ、似顔絵からロゴへ」という流れがあることで、ロゴに意味が生まれます。
その意味が、看板になったときにも店の顔として自然に機能します。
店舗の印象を補強するための文字設計
似顔絵に加えて、屋号の文字と「中華」の印を組み合わせています。
店主の似顔絵をモチーフにしたロゴに、明朝体のようなかっちりした文字を合わせると、全体の印象に少し硬さが出てしまいます。
飲食店、特に町中華のような業態では、手書きのようなラフさや温度感のある表現の方が、店の雰囲気となじみやすい傾向があります。
筆文字には、そうした親しみやすさや、手仕事の印象を自然に伝える力があります。
そのため、既存の筆文字にもあえて表情を加え、ラフさを残しながら、似顔絵の持つ柔らかさと調和するようにしました。
あわせて配置した「中華」の印は、業態を直感的に伝えるための要素です。
通りから見たときにも、何の店であるかが一目で伝わりやすく、視認性や理解のしやすさを補っています。
似顔絵と筆文字、そして印を組み合わせることで、店主の人柄と店舗の雰囲気が一体として伝わる構成を目指しました。
まとめ|目指したのは「店の個性が伝わるロゴ」
ロゴは、見た目を整えるだけでなく、実際に使われる場面を前提に設計することが重要です。
この事例では、看板での見え方を意識しながら、店主の似顔絵をモチーフに取り入れ、筆文字や「中華」の印を組み合わせることで、店の個性や雰囲気が伝わる形を目指しました。
似顔絵によって人柄を伝え、筆文字で空気感を補い、「中華」の印で業態を直感的に示す。
それぞれの要素を整理しながら一つにまとめることで、店舗の顔として機能するロゴにつながっています。
見た目だけでなく、どのように認識され、どのように使われるかまで含めて設計することが、長く使いやすいロゴをつくるうえで重要だと考えています。

