古道具店ロゴ制作の考え方|記号として成立させるための整理

今回ご紹介するのは、
古道具店を営む個人店様のロゴ制作についてです。
店主の方の苗字をモチーフに、
記号として整理したロゴを制作しました。
本記事では、どのような前提整理と判断を経て、この形に至ったのかを中心にまとめています。

ご依頼の背景とブランドの前提整理

ご依頼主である「古道具」様は、
明治時代以前の美術品や古道具を中心に扱うお店です。

ロゴの主な使用用途は、

  • ホームページ
  • 名刺

であり、黒一色・単色での使用が前提として示されていました。

また、

  • ロゴは文字のみでも可
  • 背景透過が必要
  • 白抜き・黒ベタの両方に対応できること

といった、実務面での条件も初期段階から共有されていました。

ターゲット像から見えた重要なポイント

想定されている顧客層は、
50代・60代・70代以上の男性が中心。

また、不動産会社や解体業者などからの紹介を通じて、
買取の機会が生まれるケースも多いとのことでした。

そのため、
分かりやすい派手さや新しさよりも、

  • 信頼感
  • 落ち着き
  • 時間の積み重なりを感じさせる印象

を優先する必要がありました。

ロゴを「単色前提」で考えた理由

今回のロゴ制作では、
配色や装飾に頼らず、形そのもので成立することを軸に考えています。

  • 黒一色でも使える
  • 白抜きにしても破綻しない
  • 印刷・Webのどちらでも再現性が高い

こうした条件を満たすため、
線の太さや余白、構造そのものがロゴの印象を決める設計としました。

モチーフとして「円形」を採用した考え方

全体の形状は円形をベースとしています。

これは、

  • 家紋を思わせる安定感
  • 記号としての分かりやすさ
  • 単体で成立する強さ

を重視したためです。

ただし、単純な円ではなく、

  • 一部に切れを入れる
  • 内側に流れと余白を持たせる

ことで、静かですが単調にならない構造にしています。

中央に「杉」を配置した理由

ロゴの中央に配置している「杉」は、
店主の苗字に由来する文字です。

ただし、
名前をそのまま強調するのではなく、

  • 円形の中に自然に収まる形
  • 文字としても、図形としても読める構造

になるよう整理しています。

結果として、

  • 店主様の名前を内包しつつ
  • 初見では「記号」として認識され
  • 知る人には意味が伝わる

という、家紋に近い読み取り方ができるロゴになっています。

文字とシンボルの関係性について

ロゴは、

  • 中央のシンボル単体
  • 「古道具」の文字表記
  • ローマ字表記(Furudōgu)

それぞれを用途に応じて使い分けられる構成としています。

名刺やWebなど、
使用サイズや媒体が変わっても、
どの要素を切り出しても成立することを前提としています。

黒を基調とした表現について

色味は、
重厚感・静けさ・高級感を意識し、黒を基調としています。

ただし、

  • 威圧的にならない
  • 近寄りがたい印象にならない

よう、線の太さや余白の取り方でバランスを調整しました。

古道具店としての落ち着きと、
日常的な接点の持ちやすさの両立を意識しています。

完成ロゴと使用イメージ

完成したロゴは、

  • 黒一色
  • 白抜き
  • 背景透過

いずれの条件でも使用できる構成となっています。

ホームページや名刺といった
実際の使用シーンでも、
視認性と統一感が保たれることを確認しています。

まとめ|目指したのは「名前を内包した記号」

今回のロゴ制作で目指したのは、
単に店名を示すロゴではなく、
店主の名前や背景を静かに内包した記号でした。

説明がなくても成立し、
知れば意味が重なる。

その距離感を大切にしながら、
形と構造を整理しています。