古道具店ロゴ制作の考え方|記号として成立させるための整理

今回ご紹介するのは、古道具店を営む個人店様のロゴ制作についてです。

店主の方の苗字をモチーフに、記号として整理したロゴを制作しました。

本記事では、どのような前提整理と判断を経て、この形に至ったのかを中心にまとめています。

ご依頼の背景とブランドの前提整理

ご依頼主である「古道具」様は、明治時代以前の美術品や古道具を扱う店舗で、想定される利用者層は50代〜70代以上の方が中心です。

そのため、ロゴに派手さや新しさを求めるよりも、落ち着きや信頼感、時間の積み重なりを感じられる印象を優先する必要がありました。

共有されていた条件としては、以下になります。

・ロゴは黒一色・単色で使えること
・背景透過に対応していること
・白抜き・黒ベタいずれでも破綻しないこと

これらの情報を踏まえ、装飾や配色に頼らず、形として成立するロゴであることを重視して設計をしました。

ロゴ全体の構造と安定感の確立

アンティークという、時を経るほどに価値が増すものを扱う業態において、ロゴに求められるのは一過性のインパクトではありません。

何十年、何百年と変わらずに存在する「価値の裏付け」を感じさせる佇まいです。

本設計では、装飾によって意味を後付けするのではなく、形そのものが持つ「構造の強さ」を整えることを最優先しました。

ベースに円形を採用したのは、日本古来の家紋が持つ普遍的な安定感を演出し、法人としての堅実さと歴史への敬意を象徴するためです。

左右対称の安定した構図の中に、あえて「切れ」や「線の強弱」を組み込むことで、静止しすぎない知的なリズムを表現。

この細部への配慮が、手に取った瞬間に伝わる「鑑定眼」や「信頼」の土台になると考えています。

文字に込めた「審美眼」と「親しみやすさ」

骨董・古美術という業態は、時として「敷居の高さ」を感じさせてしまいます。

そのため、ロゴタイプ(社名部分)には伝統的な明朝体ではなく、あえて現代的なエッセンスを加えたゴシック体を採用しました。

歴史の重みの中に「店主の柔和な人柄」が滲み出るようなバランスを追求。

文字の間隔(余白)を広く取ることで、初めてのお客様でも安心して門を叩けるような、開放感のある品格を目指しました。

黒を基調とした表現について

配色には、品格を象徴する「黒」を基調に採用しました。

アンティークの重厚感を表現しつつ、線の強弱を微調整することで、威圧感を与えない「凛とした柔らかさ」を追求しています。

また、本設計では名刺やWeb、あるいは刻印といった多様な媒体での展開を想定し、単色・白抜き・背景透過のいずれにおいても一貫した存在感を保つ「再現性」を重視しました。

媒体ごとにロゴの印象が揺らがないよう、線一本の太さから余白の数ミリに至るまで徹底して管理。

どのような環境に配置されても、変わらぬブランドの性格を正しく伝える「盤石な構造」を形にしています。

まとめ|目指したのは「名前を内包した記号」

今回のロゴ制作では、単に目印となるマークを作ることを目的とするのではなく、アンティークという業態が本来持っている「時間を経ても価値が揺らがない」という性質を、どのように視覚として定着させるかに重きを置きました。

流行や装飾に寄せるのではなく、長く使い続けられること、そして見るたびに印象が積み重なっていくことを前提に設計を進めています。