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映画『大脱走』スティーヴ・マックィーンのカッコよさを解説します

ネタバレ含みますのでご注意ください。

脱走することをサッカーのオフェンスからディフェンスという風に、前半部分を密室群像劇、後半部部は開放された捕虜たちによる逃亡劇へとシフトした手腕の見事さ!

捕虜となった男達による、チームワーク、友情、不屈の精神、尚且つ息をのむスリル感が堪らない。

脚本が素晴らしいので、前半と後半のメリハリもあり、あっという間の3時間です。

そして音楽においても、テレビCMで多く使われていることから誰でも一度は耳にしたことのある「大脱走マーチ」。

この軽快な明るい曲が、ストーリーから浮いていて、そのことが逆に切なくなるのだけど、映画に合ってないようで合っているセンスに脱帽。

後はやっぱり、スティーヴ・マックィーンが最高です。

何度も脱走を繰り返し、その度にグローブとボールを持って、独房に入り、壁に向かってキャッチボールをする。

どんな困難にも動じないあっけらかんとしたマイペースなところが好きです。

他の登場人物たちは連合軍における役割を考えて、ドイツ軍をかく乱することを念頭にして脱走をするわけだけど、マックイーン演じるヒルツに関しては「ただ自分だけ助かればいい」という考えのもとで行動をしているんですよね。

誰にも束縛されずに自分のやりたいことを自由にやるという感じが、周りから浮いているんだけど、このマイペースなところは、多くのサラリーマンにとって憧れなんじゃないかな。

そんな『大脱走』のあらすじと感想をご紹介します。

あらすじ

1943年、第2次世界大戦をしている時のドイツが舞台。

ドイツ軍は連合軍捕虜の中で、機会があれば脱走を何度も繰り返す問題を起こす男たちを新しく建設した「スタラグ・ルフト北捕虜収容所」に集め、厳重な警備で監視することになった。

この収容所のルーゲル所長は連合軍のラムジー大佐に捕虜と収容所における伝達係を任せる。

連合軍の捕虜の中には「X組」と呼ばれる脱走のスペシャリストたちがいた。

イギリス空軍所属の指揮官バートレット(リチャード・アッテンボロー)が、ゲシュタポによって捕えられ、収容所に送還されてくる。バートレットは「ビックX」といわれ、X組のリーダ的存在。

早速、バートレットは兵士たちを集め脱走にむけての作戦会議を進め、兵士たちの士気は一気に高まる。

バートレットの作戦は森へ抜けるトンネルを3か所掘り、総勢250名をまとめて脱走させるといったものだった。

作戦は直ぐ、各自それぞれに仕事が分担され、実行に移された。

情報集めはマック、トンネルを掘るのがウィリーとダニー(チャールズ・ブロンソン)、仲間から頼まれたものを調達をするのがヘンドリー(ジェームズ・ガーナー)、機械に詳しいセジウィック(ジェームズ・コバーン)、兵隊服を使って脱走用の服に仕立てるグリフィス、身分証の偽造はコリン(ドナルド・プレザンス)といった、メンバーたちの特性を活かし、着々と準備が進んでいく。

一方、ヒルツ(スティーヴ・マックイーン)とアイブスはバートレットたちとは組まずに、2人で脱走を何度も行っていた。

しかし長い捕虜生活によって精神が病んでいたアイブスは、思い余って看守のいる前で脱走しようとして射殺される。

これが契機となってヒルツもメンバーに加わる。しかし、その間において様々なトラブルが発生する。

トンネル掘り担当のダニーが度重なる落盤事故によって、閉所恐怖症に見舞われたり、偽造をしている際、コリンの目が見えなくなったりといった状態。

それに加えて、トンネルを3箇所にわけて掘り進めていた1つが監視兵に見つかってしまう。

そんな中、やっと1つのトンネルが鉄条網の外へ到達することができた。

計測のミスにより、目標としていた森の中まで穴が掘られていなかったが、どうにか暗闇をチャンスにして、次々と捕虜は脱出してゆきます。

だが、途中で脱走がバレてしまい、脱走できたのは76名でした。すぐに追跡が開始され、それぞれ寝食を忘れて必死に逃げていく。

バートレットはマックと共に行動し、フランス人を装って列車に乗る。

その列車には同じく、視力が低下しているコリンと共にするヘンドリーやエリック(デヴィッド・マッカラム)も乗っていた。

ヘンドリーは検問から逃れるために、コリンと走る列車から脱出。

バートレットとマックとエリックは駅で下りるが、ゲシュタポに気づかれてしまう。

エリックはバートレットをかばって射殺される。その後、バートレットとマックも捕まってしまう。

他の脱走したメンバーたちもゲシュタポによって捕まっていた。

ヘンドリーとコリンはドイツ空軍の飛行機に乗って、スイスに向かうが、国境を目の前にして燃料不足により墜落。

逃げようとしたコリンはドイツ兵によって射殺され、ヘンドリーは捕まる。

一方、バイクを使って逃走を目論んだヒルツも、最後に逃げ切れず捕まってしまう。

結局国外へ逃亡することができたのは自転車と貨物列車を使い、フランスまで行き、その後運よくレジスタンスの力を得て、スペインに逃亡することが出来た。

後は、船で川を下り、外国船に潜り込むことができたウィリーとダニーの3名だけだった。

ゲシュタポによって捕えられたバートレットたちは収容所に戻る途中全員銃殺される。

今回の失態から、ルーゲル所長は解任され、こうしてヒルツたちによる大脱走計画は終わったのです。

スティーヴ・マックィーンのカッコよさにつきます

何といっても『大脱走』はスティーヴ・マックィーンのカッコよさにつきます。バイク姿のマックィーンのカッコよさは誰もが認めざるを得ないところですよね。

例えば、バイクを揺らしながら、残りの燃料を調べるシーンにシビれない男はいないんじゃない。

マックィーンの醸し出す雰囲気は、ある程度、男臭さを意図的に仕草を意識して披露している。

また、他の作品にはない、とぼけた一面が観れるのもいいですね。

脱走しては捕り、グローブとボールを持って独房に入れられ、壁に向かって一人キャッチボールをしている。

一見するとふざけているようだけれど、ヒルツの心情を表現した名シーンだと思います。

マックイーンのイメージとして、どの作品も険しい表情をしていて、余り感情表現を出すタイプの役者ではない。

どちらかというと、ちょっとした沈黙で生じる心の動きをを表現する役者で、それが観ていてとてもリアルなんですよ。

本人の存在感だけで勝負しているというという感じを受けます。

どっしりと構えていて、オーラがビシビシ伝わってきます。そういった意味でも、マックィーンは大スターであると思いますね。

スティーヴ・マックィーンのバイク逃走シーンの裏話とは?

『大脱走』は、スティーヴ・マックィーンがバイクで逃走するシーンが映画における一番の見どころですが、実は裏話があります。

監督のジョン・スタージェスは、1人のヒーローを中心としたものではなく、史実に基づいたドキュメンタリータッチの群像劇を作ろうとしていたとのことです。

ところが、それに対して、マックィーンが受け入れないことから、一定期間撮影をボイコットします。

監督がやむを得ずマックイーンなしで再開しようとすると、彼が脚本家と共に撮影に合流します。

その結果、これまでの脚本の変更を余儀なくされ、マックィーンの出演シーンが大幅に増えたというエピソードがあります。

これで、もうおわかりだと思いますが、本作のメインとなったバイク疾走シーンは、本来、監督の構想にはなかったのです。

どんな風にやればマックィーンに満足してもらえるか、監督は苦慮し急遽、走ってくるバイクに罠を仕掛けて奪うというシーンになりました。

1人の俳優のワガママがなければ『大脱走』の魅力は大いに損なわれてしまっていた。

ぽっと出の天狗になっている、ただ勘違いだけのワガママ俳優と彼の違いはここにあるのです。

精神的なワガママと創造に伴うワガママは別次元と捉えるべきですね。日本の俳優にも、是非見習ってもらいたいものです。

ついでにマックィーンが、バイクで去っていった後を追うドイツ兵は、なんとマックィーン自身なんですね。

編集技術によってマックィーンがマックィーンを追う構図が上手くできている。

また、3メートルの鉄条網をバイクで勢いよく飛び越えるシーンは、映画会社による保険の事情もあって、マックィーンではなく友人のバド・イーキンズが演じた。

リハーサルでは、マックィーンが挑戦し、鉄条網に衝突し失敗したとのこと。

結果的に、バイクシーンがあることによって、エンターテイメントとして大成功をした。物事どう転ぶか本当にわからないものですね。

脱獄映画のパターンを確立した

脱獄モノにおける定番パターンを本作て確立しています。

特によく用いられるのが、脱獄の際、トンネルを掘った時に処分に困る土。この土を処分するためにズボンに細工をして、土を捨てて行くシーン。

クリント・イーストウッド主演の『アルカトラズの脱出』や海外ドラマ『プリズン・ブレイク』にも使われ、多大なる影響を与えています。

また、このトンネルを掘るチャールズ・ブロンソンのリアル感が堪らない。

実際にブロンソンは炭坑夫を少年時代に経験していたことから、それが見事に活かされ、トンネル掘りのシーンを見ていると自ずと緊張感がみなぎる。

まさにこれこそが本当の芝居というもの。身体全体を使って表現する役者です。

後、脱獄モノに欠かせないのが、各人の得意分野を活かす役割分担が、それぞれのキャラが立っているので面白い。

一筋縄ではいかない個性派ぞろいなので、ワクワクします。

収容所における厳しい監視から隠れて捕虜たちが脱走計画を企て、着実に見つからないように実行する捕虜たちが共に協力し合いながら、収容所における生活のやり取りも魅力である。

こんな斬新なアイデアを展開できるジョン・スタージェス監督はやはりすごい。

なぜ、捕虜となった兵士たちは何度も脱走を繰り返すのか

本編でも語られているけど、捕虜たちはただのんびりと収容生活を過ごしていれば良いというわけではありません。

前線で戦えないことの引き換えに、脱走を積み重ねることを通じて、敵の後方を撹乱することを目的とします。

ビッグXも脱走の理由を「脱走した捕虜の捜索によって第三帝国の混乱を巻き起こす」ことが狙いだと言っています。

それが兵士たちの間で暗黙のルールとして使命を全うしているわけです。

『大脱走』は史実を元にしたフィクションだけど、実際に脱走した捕虜の探索にあたり、7万人のドイツ兵士が投入されたといわれます。

兵士が減らされたことにより、戦力が落ちるので、効果は十分にあったといえますね。

そうはいっても、ドイツ軍は、連合軍が脱走するかもしれないという疑いだけでは、証拠がないので、処罰するわけにはいかない。

はっきりとした証拠が捜しあてなければ処罰できないし、やみくもに拷問するわけにもいきません。

このようなことは「ジュネーブ条約」によって取り決められています。

脱走して捕まえた捕虜が軍人であると確認できればこのジュネーブ条約に沿って行わなければいけません。

だから、ヒルツがドイツ軍に取り囲まれてすぐに階級バッチを見せたわけです。

一方、脱走する可能性が高い捕虜、あるいは脱走を実施した捕虜が逮捕命令に反発し、逃亡を続けるといった場合でも例外ではありません。

また、ビックXらが丘の上での射殺射殺されたけど、多分脱走という不名誉な事実を闇へ葬り去る目的とこれ以上のトラブルを避けるために、脱走中の逃亡という名目で射殺したと考えられるわけです。

例え条約で公言されているとはいえ、この辺は戦争なので不条理な世界といえますね。

戦争映画で描かれるナチスドイツのイメージとは違っている

『大脱走』の舞台となった「スタラグ・ルフト北捕虜収容所」は、ドイツ空軍が管轄し、中尉より上のクラスを集めた収容所。

ドイツ兵からすれば、イギリスやアメリカの将校がほとんどなので、ユダヤ人を集めたアウシュビッツ収容所とは違って、不当な対応なんかできません。

普通に考えて、中尉なら中隊長、大尉なら大隊長クラスを務める階級になります。

例えば、ヒルツは大尉、7月4日の独立記念日に鉄条網に登って射殺されたアイプスでさえ中尉です。

トンネル掘りのダニーやウィリーも大尉、視力が低下した偽造屋のコリンも大尉でした。

冒頭の連合軍ラムゼイ大佐のセリフで「脱走は将兵の義務である」と言い、所長のルーゲル大佐はジュネーブ条約を熟知していたことから、捕虜の扱いには注意していた。

多くの戦争映画で描かれるゲシュタポや親衛隊は悪役で、陸・空軍は人格者であり紳士的なんですね。

だから、ある程度管理がゆるく、簡単に私物が持ち込めたり、看守や所長の持ち物を盗めたりすることができたわけです。

この部分は、他の脱獄モノとは大きく異なる点です。

また驚くこととして、収容所の看守たちがとても思いやりがあって、捕虜たちに対して理解が示されている光景は、ドイツ人というと辛気臭くて融通が利かないというイメージが刷り込まれているので、少し意外な点でした。

まとめ

『大脱走』の魅力は、スティーヴ・マックィーンのカッコよさはいうまでもないけど、それ以外にも多くの魅力的な登場人物がいます。

例えば、トンネル掘りで、相次ぐ落盤事故のによって、閉所恐怖症に苦しむダニー。
進行性の近視による盲目と同じ様な状態になったコリン。

言葉巧みに看守を誘導して、物資を調達するヘンドリー。
必死に逃げる者たちとは違って、盗んだ自転車で悠々と逃げ切り、脱走に成功したセジウィック。

そんな個性的な登場人物のやり取りで、私が特に好きなのが、盲目の状態になったコリンを助けるために脱走を共にするヘンドリーの友情です。

ドイツ軍の飛行機を使い国境を抜けようとするが、燃料が切れたことによって墜落し、コリンはドイツ兵によって射殺されてしまう。

コリンが死ぬ間際にヘンドリーに発した「ありがとう、逃がしてくれて」は、とても感動的です。

ストーリーの前半部分は、収容所の密室劇だけど、後半部分は76名による脱出劇に費やされるかたちとなる。

これまでの脱走における限られた状況の中で繰り広げられたストーリーが丁寧に描かれていたからこそ、脱出後、一気に開放感が生まれている。

このようなひとつの作品を完成させるにおいての時間を考えたモノ造りが素晴らしい作品を生み出すんですね。

だからこそ、『大脱走』が今でも名作として語り継がれているのだと思います。

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