第90回アカデミー賞受賞作『シェイプ・オブ・ウォーター』の感想




ネタバレ含みますのでご注意ください。

 

2018年のアカデミー賞で、作品賞・監督賞・作曲賞・美術賞・と多岐に渡り受賞されたこの作品を観るのを楽しみにしていました。

 

感想はストーリーが、とてもシンプルでわかりやすかった。
キャラクターの設定もメリハリが効いていて、いい人は良い、悪い人は悪いとそのまんま描かれている。

 

時代背景や特異な世界観を混ぜ合わせているけど、少しばかりディズニー的な要素を取り入れていることから、万人受けするラブストーリーだったと思う。

 

イライザのルーティーンワークのこなれた雰囲気から、彼女は自分の立ち位置を見定め、周囲に波風を立てずに、生きてきた事が伝わる。

 

それが言葉や、人間といった枠さえも超えて愛が育まれ、彼女の瞳が次第に力強さを帯びて見えるようになる過程が見事。

 

最初は手話だけなので、理解しづらかったけど、気がついたら理解ができる不思議さがあります。
そんな『シェイプ・オブ・ウォーター』のあらすじと感想をご紹介します。

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あらすじ

予告動画はこちらになります。 ↓ ↓ ↓

1962年(昭和37年)のアメリカ・メリーランド州のボルチモアが舞台。

 

イライザ・エスポジート(サリー・ホーキンス)は、幼かった頃のケガが要因となって、話すことができない障害を負った。

 

イライザは映画館の上で部屋を借りて独りで暮らしながら、政府機関「航空宇宙研究センター」において清掃員として勤務している。

 

隣人のゲイであるジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)、勤め先の同僚で、会話が出来ないイライザにいつも気づかいをしてくれるゼルダ(オクタビア・スペンサー)に囲まれ、穏やかな毎日を送っているが、イライザは恋人がいない寂しさを常に持ち合わせている。

 

そんなある日、宇宙研究センターに、謎の生物が運ばれてくる。
その生物は、水陸両方で生活できる魚人「半魚人」のような存在だった。

 

異彩を放ちながら精悍さと気品を秘めた風貌をもっている。
ストリックランド大佐(マイケル・シャノン)が、半魚人を邪険にしたことによって指をちぎられてしまう騒動があり、そこで、清掃のために部屋に入ったイライザは半魚人に魅了され、心を揺り動かす。

 

イライザは半魚人にゆで卵を与え、一緒に音楽を聴くなどして時間を共有していくうちに、2人は次第に親密な関係となってゆく。

 

半魚人が宇宙研究センターに運ばれてきた目的が徐々に明らかにされてゆく。
アマゾンの奥地で、神と称して現地の人から崇められていたとされるこの半魚人を、ホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)は人間に代わる宇宙飛行士としてロケットに搭乗させようと進言する。

 

それに対して、ストリックランドは、生体解剖でこの半魚人の秘密を明らかにした方がよいと主張し、上官にあたるホイト将軍(ニック・サーシー)の同意を得る。

 

イライザは、その会話を盗み聞きしていた。

 

半魚人の身を案じ、動揺したイライザは、ジャイルズに自分の考えを明かし、半魚人を救う作戦に手伝ってほしいと頼む。

 

一方ソ連のスパイであるホフステトラーは、アメリカが半魚人の実態を知って、宇宙開発の優位に立つことを防ぐために、半魚人を殺すよう政府に命じられる。

 

しかし、ホフステトラーは貴重な研究材料を殺すことに抵抗する。

 

イライザはジャイルズ、ゼルダ、ホフステトラーの力を借り、無事宇宙研究センターから、半魚人を助けだすことに成功する。

 

雨で河が増水するまで、イライザは、半魚人と一緒にアパートで暮らすこととなる。
半魚人が、何者かによって持ち出されたことにより、ストリックランドはホイト将軍から「36時間以内に見つけ出せ」と命令を受ける。

 

ストリックランドは、ホフステトラーに疑惑を抱き、彼の行動を監視していた。
一方、ホフステトラーは、命令を背いたことがバレてしまい、ソ連のスパイに撃たれてしまう。

 

ストリックランドは、ホフステトラーに拷問をして、半魚人の行方を聞き出す。
そこで、ゼルダとイライザが、半魚人を持ち出したことを知る。

 

ゼルダの家に押しかけ、彼女に半魚人に居所を吐かせようとするストリックランドに、ゼルダの亭主はイライザがかくまっていることを明かしてしまう。

 

ストリックランドはイライザの家に向かう。
彼女の命が危ないと察知したゼルダは電話ですぐ逃げるように言う。

 

イライザとジャイルズは、半魚人を連れて運河に向かう。

 

その時、2人を追ってきたストリックランドが、半魚人とイライザに対し拳銃で発砲してきた。

 

イライザは息を引き取るが、命が助かった半魚人はストリックランドを殺害し、イライザを抱え河に飛び込む。

 

半魚人の驚異的な治癒能力によって蘇ったイライザは、彼らと永遠に一緒にいられるようになったのだった。

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デル・トロ版『美女と野獣』

『美女と野獣』と比較しても似ている部分は人間の女性と怪物が織りなすラヴ・ストーリーとなる部分のみ。

 

それよりも、デル・トロ版といったのは『美女の野獣』をアンチテーゼにした意味合いが強いから。

 

『シェイプ・オブ・ウォーター』のヒロイン・イライザは生後間もなく川縁で置き去りにされ孤児院で育てられ、さらに幼児期に、声帯を傷つけられたことが要因で声を失ってしまった。

 

孤独で心を閉ざした彼女は、同じく独り者で同姓愛者の初老の画家と隣同志ということから互いに助け合いながら映画館の階上のアパートで暮らしている。

 

イライザが恋した相手は、なんと半魚人。
アマゾンの奥地から捕らえられ、その彼も同様に孤独だ。

 

社会的にみて、弱者の2人が出逢い、心を通わせるようになる。

 

美しいヒロインと呪いに掛けられ野獣になってしまったイケメンの王様が主人公のおとぎ話とは、そもそも違います。

 

社会から浮いてしまっている弱者の悲哀と権力を盾に振舞う不当な差別と対比した視点で見れば、社会的なテーマが明らかになってくる。

 

『シェイプ・オブ・ウォーター』の舞台は、1962年のアメリカ・ボルチモア。
南部の地域では、堂々と黒人差別が横行する状況で、公民権運動が至る所で盛り上がりつつある頃。

 

後に、吹き荒れることとなる社会変革の足掛かりになり、黒人や同姓愛者の人に対する迫害があった象徴的な年代です。

公民権運動とは
1950年代から1960年代にかけて、アメリカの黒人(アフリカ系アメリカ人)が、公民権の適用と人種差別の解消を求めて行った大衆運動のことです。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wikiアフリカ系アメリカ人公民権運動

 

ほかにも米ソ冷戦が、宇宙開発競争を招いた年をあえて選んだデル・トロ監督はやはり確信犯です。

宇宙開発競争とは
1962年2月20日、ジョン・グレンはマーキュリー6号(フレンドシップ7)で地球周回軌道を3周し、最初に地球を回ったアメリカ人となった。
一方、ソ連は1962年8月11日から15日にかけてボストーク3号と4号を同時に打ち上げ、両機のランデブーのテストを行い、史上初の2人同時宇宙飛行を成功させた。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/宇宙開発競争

 

一生涯話すことが出来ずひとりぼっちの女性、家族のないゲイの老人、祖国に裏切られたスパイ、そんな周囲の片隅で、ひっそりと生きる人びとが半魚人を救う物語だとデル・トロ監督は語っている。

 

ダークファンタジーでありながら、やたら繊細で愛情をこめていて美しい。
私としては文句なしに心惹かれる映画だった。

無形とされる水の形とは何なのか

そんな風に例えたら、本編に登場する人たちが求めているものって、思いのほか無形のものばかり。

 

そういえば、人が心の底から欲しいものって形なんて存在しないものばかりかもしれない。

 

声を失った女性。
一方的に神として崇められた半魚人。
愛情が持てない夫と離れられない差別される黒人女性。

 

自分の才能が中々受け入れてもらえないでいる売れない画家。
本国の忠誠心がグラつくソ連のスパイ。
権威を手に入れたが、何処か満たされないでいる大佐。

 

この誰もが、満たされないでいる。

 

だからこそ、言葉を失ったイライザに焦点を当てたことで、人それぞれ捉え方が異なり、共感し辛い愛情表現が、わかりやすい形となって伝わり、作品に深みが出たのだと思う。

ダグ・ジョーンズに神々しいオーラを感じる

言葉や人の枠を超えて、イライザと心を通じていく半魚人を演じたダグ・ジョーンズ。
デル・トロ監督作品においては、欠かすことができない俳優さんです。

 

『 ヘルボーイ』のエイブ・サピエンや、『パンズ・ラビリンス』で主人公オフィリアの夢に出てくる、パンとペイルマンといった怪物を演じました。

今回、あえて名前は存在しないようですね。

 

本編においても「不思議な生き物」としか呼ばれていないので、逆に神秘的な雰囲気がします。
心なしかダグ・ジョーンズそのものが、なんだか神々しいオーラが感じるのが凄いですね。

 

数多く怪物を演じてきた彼の演技は、必見です。
是非確かめてみてください。

まとめ

冷戦下におかれたアメリカの政府関連施設に運び込まれた『半魚人』と、清掃員イライザの交流。

 

このイライザが声を出せないことが『シェイプ・オブ・ウォーター』の重要なテーマ。

 

半魚人は神と同じ様に傷を癒すし、反対に半魚人が負わせた傷は癒えない。
そして、イライザが彼を愛したように、半魚人もまたイライザを愛する。

 

色んな意味で、この『シェイプ・オブ・ウォーター』は、アメリカ映画的だなぁーと感じた。
一つ目は、かの名作『E.T.』を彷彿とさせる雰囲気が、多少なりとも反映されているから。

 

二つ目は、デル・トロ監督が参考にしたとされる、小さい頃に観た『大アマゾンの半魚人』だったようで、ホラー映画好きの監督らしいと納得しました。

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