フレンチトーストを作る場面が感動的『クレイマークレイマー』の感想




ネタバレ含みますのでご注意ください。
この映画は、離婚を題材にしているけど、根底は家族のドラマです。

 

離婚率が増加している現代では珍しい事ではない。

 

離婚の理由が、夫の浮気や家族にDVを加えるなど、生活していく上で支障をきたすことが原因ではないこと。

 

これまでずっと演じてきた、良き妻、母であった女性が自我に目覚め、自立した一人の女になって自分を取り戻したいと決心したことに端を発する。

 

アメリカでは当時社会現象として衝撃を与えた作品。

 

最後、妻は父と子の愛情に負けて、息子を引き取ることを諦める結末になっている。

 

本作はダスティン・ホフマンの演技が一段と光っていますよね。

 

それは彼自身が、本作に出演中、10年間連れ添った奥さんと離婚を前提として別居生活に入っていたんです。

 

彼女の連れ子である義理の娘と、彼との間に生まれた二人の娘は母親に引き取られるという映画と同じ境遇だった。

 

共演のメリル・ストリープも1976年に舞台俳優ジョン・カザールと付き合うが、彼が78年3月に死去。

 

間もなく弟の親友の彫刻家ドン・ガンマーと結婚します。撮影中は妊娠しており、79年11月に男児をもうけている。

引用元:世界映画作品記録全集1981年版 / キネマ旬報社

 

二人とも役に感情移入できる環境だったので、リアルティーがあったんですね。

 

そんな『クレイマークレイマー』のあらすじと感想をご紹介します。

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あらすじ

動画はこちらになります。 ↓ ↓ ↓ ↓


ニューヨークはマンハッタンのごく普通のサラリーマン家庭が舞台。

 

広告代理店に勤めるテッド・クレイマー(ダスティン・ホフマン)は、大口の案件を任され、やる気に満ちていた。

 

家路に着くと、妻ジョアンナ(メリル・ストリープ)の様子がおかしい。
テッドは気にすることもなく、自分の話をジョアンナにする。

 

ジョアンナは意を決し、最愛の子供を残して家を出ることを告げる。
彼女は憔悴しきっていて、逃げる様に出て行ってしまう。

 

結婚して八年。

 

彼の目から見たら、何ひとつ不満のない生活を送っていたと思っていたジョアンナ。

 

テッドにとっては、まさに青天の霹靂。この日から、息子ビリーとの生活が始まる。

 

テッドは仕事が終わると真っすぐ家に帰り、ビリーの世話と家事に追われる。
家事も育児も不慣れたため、ビリーに怒鳴り散らす始末。

 

ビリーも母親不在の状況に戸惑うばかり。二人の関係は、どこかぎこちなく最悪な関係。

 

お互いストレスがたまり、些細なことでケンカが絶えない。そんなある日、ビリーのしつけで怒るテッド。

 

ジョアンナのことで泣き叫ぶビリー。ここで初めてビリーは、自分が抱えている悩みを打ち明ける。

 

ジョアンナが出て行ったのは自分が悪い子だから?

 

次はテッドがビリーを置いて居なくなってしまうと思っていたのだ。

 

テッドは、ビリーがそこまで思いつめて悩んでいたことを知る。

 

ビリーを諭すように、テッドは自分の考えが間違っていたことを伝える。
お互いに心を開いたことで、歩み寄った瞬間だった。

 

その日を境にして、二人の関係は良好になった。

 

やっと子供との距離をつかめ、愛情を確立させたと思った矢先、二人の関係を揺るがす出来事が起こる。

 

家を出て行ったジョアンナがテッドの前に現れ、ビリーを引き取りたいという。

 

応じなければ裁判も辞さない構え。

 

テッドは、そのこともあって仕事に身が入らず、大口のクライアントからデザインのクレームがきてしまう。

 

会社側はテッドを外し、新体制で進めることになると副社長から告げられ、解雇される。

 

失業したテッドは、まさに泣きっ面に蜂。

 

給料は前社より下がるが、収入がなければ裁判で争うことができないので、自分の手掛けたデザインを面接でプレゼンした甲斐もあって再就職先は見つかった。

 

裁判はテッドに不利に進み、ビリーはジョアンナが引き取ることとなる。

 

一年以上も一人でビリーを育て、今やテッドにとってはビリーがいなければ生きてさえいけない思いで半狂乱になる。

 

いよいよビリーとの別れの日。

 

テッドは別れの理由を何とか子供心にもわかるように息子に説明しようとする。

 

泣きじゃくるビリー。

 

ジョアンナはテッドと二人だけで話したいと言いマンションのロビーに呼びつける。

 

そこで、かつてビリーと一緒に暮らしていた日のことを考えていたことを告げる。

 

新しい部屋にも今と同じ雲の模様を描こうと、ビリーが今まで住んでいた部屋と同じ状況にしようと思ったら、やっぱりビリーはテッドの下で暮らした方がいいと決断する。

 

ジョアンナはビリーにその旨を直接話す為、エレベーターに乗り込んだ。

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視点の捉え方によって作品が違って見えてくる

本作は、テッドとジョアンナ双方の視点で観賞すると、作品の捉え方が変わって見ることができます。

テッドの視点

テッドは仕事第一で、家庭を顧みない。ジョアンナとの会話は乏しい感じ。

 

そんな生活に耐えきれなくなり、ジョアンナは家出をする。

 

何の前ぶりもなく、子供を置き去りにして消息がわからなくなるのは、彼女にしたら深刻だと思うけど、男性の立場で見ると、理解することは難しい。

 

家族のために働いて、何不自由ない生活をさせている。「どこに不満があるんだ」って、言いたくなるよね。

 

テッドは彼女がいなくなったことで、仕事と家事を両立しなければならなくなった。

 

ようやく生活リズムが掴めたと思った矢先、息子を引き取りたいと一方的に言って、応じなければ裁判を起こす。

 

そのことで仕事にも支障をきたし、長年勤めていた会社も解雇される。

 

テッドにしてみれば、「いい加減にしろ」という気持ちですよね。自分のことしか考えないわがまま女としか思えないです。

ジョアンナの視点

テッドは、男は外で仕事をして、女性は家庭で子育てという考え方。彼女を自分の固定概念の型に嵌めようとしていた夫に感じ取れる。

 

そんな中、誰にも頼ることができない生活は、子どもを愛していないという次元ではなく、本当に孤独で押しつぶされそうな状況だったのかな。

 

ジョアンナは、自分の中で抱えている、むなしさや堪え難い寂しさをビリーに見せることが耐えられなかったから家を出たと思う。

 

勝手に出ていき、仕事が高給で生活に余裕ができ恋人もいる女だったら、「ビリーが住む家はここしかないのよ」と自ら身を引く態度はまず取れないよね。

 

本当に息子を愛し、思っているからこそ、テッドに委ねたんですよ。それを全て理解して、涙を流すジョアンナを抱きしめるテッドは男ですね。

リアルティーに描いているからこそ説得力がある

日常生活を淡々と描いた作品はダルくなって、正直苦手。

 

そこはダスティン・ホフマン、メリル・ストリープと共に演技派の俳優とあって、あっという間に物語が進行していきます。

 

ごく普通の家庭が、妻の家出によって、家庭が崩壊する。テッドは妻がいなくなって、初めてビリーと向き合い本当の愛情が芽生えます。

 

ビリーのために、長年勤めていた会社を解雇されるという大きな犠牲を払いながらも、やがてかけがえのない関係を築き上げていく。

 

しかし、そこにジョアンナが、ビリーを引き取りたいと裁判を起こす。

 

二人は裁判で、ビリーの親権を巡り、お互い傷つけあい、結果ジョアンナが勝訴します。

 

ビリーが、幼いことから母親が必要だというただその理由だけで。

 

ジョアンナは裁判を通して、明らかに後悔した。

 

テッドも息子との触れ合いを通して何が自分の幸せなのかを理解する。結局、自分の幸せは自分以外の誰かが幸せになること。

 

それは、ビリーの視点に立った時、初めて気付かされます。

 

二人が導き出した答えは尊いですね。

ダスティン・ホフマンの計算されつくしたアドリブが凄い

主演のダスティン・ホフマンが、映画と同様に、離婚の渦中にあったことから、彼の実体験が作品に色濃く反映されています。

 

撮影中に役にのめり込んで、脚本を手直しして、アドリブを取り入れた場面が多い。

 

『クレイマークレイマー』のBlu-rayに収録されている特典映像のインタビューで、アドリブが証言されている場面は以下になります。

 

テッドがフレンチトーストを作る場面

テッドがビリーにフレンチトーストを作る有名なシーン。
コップにパンを折って浸したり、やけどしてフライパンを落としガス台を蹴る。

 

この場面は、テッドが家事に不慣れで、ビリーに頼りない面を見せてしまった恥ずかしさからの行動が秀逸だったけど、計算した演技が凄いですね。

アイスクリームを食べる場面

ビリーはテッドが作った料理のおかずが嫌いなことから食べ残し、冷蔵庫に入っているアイスクリームを食べてしまう。

 

これは、ダスティン・ホフマンの子供が小さい頃、冷蔵庫を開けたエピソードをビリー役のジャスティン・ヘンリーに話し、撮影に取り入れたいという事で、脚本には無いアドリブ。

 

このシーンがあったからこそ、二人の関係が深まったきっかけになるので、さすがですね。

テッドとジョアンナがレストランで再会する場面

ジョアンナがビリーを引き取りたいとテッドに申し出る重要なシーン。

 

彼は映画の中で、離婚協議中の妻に対する感情をメリル・ストリープに向けていたようですね。

 

帰り際に、グラスを叩きつけるシーンは自然な流れなので、同じ立場だったら自分もやったかも。

 

彼女の驚く仕草は、演技じゃなかったんですね。

法廷の場面

法廷でジョアンナが語る場面で、テッドが首を振るところ。

 

メリル・ストリープも実生活において、恋人を亡くした傷が彼女の演技から喪失感を感じたことからオーバーラップして演じたとのこと。

 

かつて愛し合った二人が親権を巡って争う。そんな状況でも、二人の心はつながっている。

 

元に戻ることは不可能だけど、次のステップにつながることを暗示している。

まとめ

古い作品になるけど、女性を取り巻く環境は、今でも変わっていないので色々と考えさせられますね。

 

自立して、一人の女として生きていくことを選択し、社会的に成功を手にすると、生活に余裕ができて子供を取り戻そうとする。

 

裁判を起こすジョアンナ演じるメリル・ストリープは、一歩間違えば、単に身勝手な悪女になるところ、女性の社会的進出や、 妻としての孤独感を見事に体現していることは、演技力のなせる技ですね。

 

ダスティン・ホフマンも、妻に家出された男の奮闘ぶりが丹念に描かれている。

 

特に、ぎこちなかったフレンチトーストが、最後はそつなく出来るなど、同情させられます。

 

観る人を泣かせようとする過剰な演出がないので、現実感があります。

 

故に、シンプルな親子のやりとりが等身大で、些細な描写でも感情移入して泣いてしまう。

 

未見の人は、是非観てください。おススメです。

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