「天は我らを見放した」で有名な『八甲田山』の感想




作品のタイトルと北大路欣也扮する神田大尉の「天は我らを見放した」で認識はあった程度で、「八甲田山」に関する本を読んでから、改めて鑑賞し感動した次第です。

 

行軍に参加した兵隊が、あまりの寒さゆえに発狂して服を脱ぎ捨てたり、凍傷者が続出したりとインパクトは半端ない。

 

リアルな映像としてみると、虚しさが残りました。
上映時間が2時間50分と長尺だけど、あっという間に観終わった感じ。

 

日本映画も、捨てたもんじゃないと思わせる作品です。
現在の邦画に辟易している人に、是非観てもらいたいですね。

 

想像以上に魂を揺さぶる良い作品なのでおすすめします。
そんな『八甲田山』のあらすじと感想をご紹介します。

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あらすじ

八甲田山は、青森県にある山で、冬場においては『白い地獄』と恐れられている。
物語は、明治35年1月(1902年)、日露戦争開戦の二年前に起きた事件です。

 

日清戦争で勝利した日本はイケイケ状態で、次に攻め込むロシアは、極寒の中での戦に慣れていることから、互角に渡り合うために、耐寒訓練と発奮し威勢を示す目的で、青森第五連隊と弘前三十一連隊が八甲田山に挑むことになる。

 

徳島大尉(高倉健)率いる弘前連隊は、山のプロフェッショナル。
彼らは人体実験のように、様々な山を登り、寒い山の中においてどのような服装で備えればよいか、耐久性を調べていた部隊。

 

それに対して、神田大尉(北大路欣也)率いる青森連隊は、雪で道が途絶えた場合、食料などを運ぶ輸送をどのようにするか、大部隊による移動を山岳の中で、どうすればよいかを調べていた部隊。

 

緻密な計画のもとに弘前連隊は、1月20日に弘前を発った。
十和田湖を迂回して八甲田山を登る11日間の日程。

 

青森連隊は、三日遅れで青森を発つ。
大隊長・山田少佐(三国連太郎)は、少数精鋭の弘前連隊に対抗し、総勢210名で挑むことで、自然の猛威を克服したという功名心から実行する。

 

また、神田大尉らが村人に話を付けていた案内人に対し、軍人としてのプライドから断ってしまう。

 

指揮権も神田大尉から山田少佐に移り、山のことを全く知らない素人がその場の思い付きで指示し、引っ掻き回し状態は更に悪化する。

 

低気圧が襲い嵐になった。
ブリザードの襲来により、隊は乱れ死者が次々と出始める。

 

一方、弘前連隊は案内人に導かれながら、計画通りに行軍を続け、全員無事に帰還した。
青森連隊は、日本の観測以上まれに見る大寒波に見舞われ、生存者はわずか11名であった。

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命がけの撮影に圧倒される

まあ、それにしても良く撮れたなぁーと。
本当の八甲田の冬季ロケってだけで、凄すぎる。

 

よくケガ人を出さずに撮影が完了したものだと圧倒されます。
撮影に3年掛けるなんてこと、今ではまず考えられない。

 

制作費も7億円と破格、スケールが違います。
何より、作品にかけるスタッフ、キャストのエネルギーがビシバシ伝わってきますね。

 

吹雪の中での芝居は、演技を超越し、説得力があります。
どうやって撮影したのかと目を疑うくらい猛吹雪のシーンは凄まじい。

 

撮影中にリアルで、凍傷起こしていないか、見ていてハラハラする。
俳優陣も素晴らしく、高倉健、北大路欣也らの熱演に見入ってしまう。

 

特に、本作においてカギとなる人物・山田少佐を演じた三国連太郎 の狂気じみた演技は必見です。

 

映像表現がまた秀逸で、兵隊たちの妄想が断続的に挿入される四季折々の場面は、田植えから稲の収穫までという日本の原風景が映され味わい深い。

無能なリーダーの下につくのは悲惨です

山田少佐は精神主義を主張とする典型的な軍人。
神田大尉は、物事の道理を考えて行動する人物。
徳島大尉は、雪山の怖さを知り尽くし、入念な準備と計画を練る堅実な人物。

 

権威というものをはき違えたリーダーと、計画的に事を成し遂げるリーダーの対比が見事に描かれている。

 

山田少佐のあまりにも精神論で突破する!とか短絡的で思い込みが激しい言動は、現代においても、リアルに起こっていることなので、身につまされ胸がいっぱいになった。

 

私が以前勤めていた社長が、まさに山田少佐そのものの人でした。
権威的でNOと絶対に言わせない典型的なワンマン社長であったことから、その都度指示することが異なり、従業員が疲弊する職場でした。

 

わかりやすい事例として、通常であれば、新規の店を新たに出す場合、入念な準備と徹底した事前のリサーチをした上で、採算があうかどうかを検討してやるものですが、思い立ったら直ぐに決め、多額の借金をして店をオープンさせ、最初は物珍しさから繁盛した。

 

しかし、直ぐに飽きられ、客足も減り、売上を維持するために、休日返上を余儀なくされ、やり繰りしていたけど、従業員が過労で倒れたりして、結局、店を閉めるにも借金が返済できていないことから、経営が圧迫して会社は倒産しました。

 

あまりにも低レベルで無知な社長によって、引き起こされた完全な人災だったので、開いた口がふさがりませんでしたね。

 

だから、上層部の命令にそむけず無理な編成で、八甲田山に挑まなければならなかった神田大尉の苦悩がよくわかります。

 

働く全ての人に仕事環境のあり方が問われ、考えさせられます。

定説を覆す陰謀説とは?

春日太一氏と米粒写経というお笑いコンビによる、『八甲田山』を取り上げたトークイベントの模様をYouTubeで拝見し、映画で観た定説とは違う切り口で語られているのを聴いて衝撃を受けた。

参考にした動画はこちらになります。↓ ↓ ↓ ↓

任務を完璧に遂行した弘前連隊に対し、山に詳しい神田大尉を差し置いて、無知な山田少佐が適当なことを言って混乱させ遭難し、部隊は210名中生存者が11名という遭難事故においては人類史上最悪。

 

山田少佐の言動が全ての原因とされているのが定説です。
ここからが仮説になるのだけど、よく調べ上げていて納得します。

 

まず驚いたのが、青森連隊の隊長は神田大尉ではなく別の人物であったとのこと。

 

実際は山に詳しい隊長がいたが、結婚して奥さんが産気づいて出産に立ち会うことから転属になり、神田大尉に変わった。

 

神田大尉は、急遽代役になったので状況がわからない。
作戦の準備は山田少佐がしていた。

 

山田少佐に関しては山に関することは無知。
この、ド素人二人を指揮系統にして、八甲田山に登らせること事態がおかしい。

 

青森連隊の最初の予定では、田代に着くことを計画しています。
この田代には、案内人を付けても着くのが難しく、弘前連隊が着いたのは奇跡に近い。

 

弘前連隊は31人と少なかったことから宿泊することができたが、210名からなる大所帯の青森連隊は泊まることが不可能。

 

仮に遭難しないで着いたとしても、露営したことから結果は同じ状況になった。
では、青森連隊はどの時点で、引き返していれば助かったのか。

 

食料を運んでいたソリの部隊が列から遅れ始め、分断された時点。
しかし、この青森連隊の目的が、雪の中をどのようにして運ぶかが、彼らに与えられた任務であったことから、ソリが遅れたことによって、引き返したら意味がない。

 

山田少佐がどのような命令を下そうが、遭難することが大前提にあったと考えられる。
最後、山田少佐は、両手両足凍傷になっているのに、映画では拳銃自殺する。

 

検証した軍医が青森ではなく、山形の軍医で、その人も間もなくして死んでいる。
全員が雪の中で死ぬという、最初から成功するはずのない作戦を意図的に仕組んだとしか思い当たらない。

 

八甲田山における事故の顛末は、明治天皇に報告されている。
当時陸軍のトップであった山縣有朋は、明治天皇に日露戦争の陣頭指揮は俺が採ると豪語して、今回の様な失態を犯し、ミソをつけてしまう。

 

このことから、明治天皇から叱責され、管理能力がないとみなされ、日露戦争に於ける最高責任者は大山巌になります。

 

山縣有朋は長州藩士の出に対して、大山巌は薩摩藩士。
このことから、州藩であった山縣を失脚させるために薩摩藩出身の人間が仕組んだ陰謀論であった仮説を春日氏は立てた。

 

確かに、今では出産の立会いをするのは、珍しい事ではないけど、当時の状況を鑑みれば、帝国軍人がそのような行動をすることはまず考えられない。

 

なので、薩摩の人間が何らかの圧力をかけて、排除したのも頷ける。
薩長の因縁が、尾を引いているとは考えもしなかったので、歴史は奥深いです。

まとめ

オールスターキャストの映画にありがちな陳腐な作品ではないです。
『八甲田山』の映像の厚みと本物の迫力は見え透いたCGではまず出すことはできない。

 

内容は、一昔前の悲劇的で薄暗い日本のイメージを強調したものなので、好き嫌いがわかれるところ。
私も正直、尺が長いことから懸念していました。

 

改めて鑑賞して、当時の映画界の職人さんたちのレベルの高さと情熱に尊敬します。
今は洋画よりも邦画に人気が集まる時代、その作品群は個人的に見て、お世辞にも出来がいいとは言えない。

 

TVドラマをそのままスクリーンに映したような薄味の安易な企画と、軽い演技しかできない俳優、この映画を見て、何が欠けているのか見習って欲しいですね。

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